金沢で家庭の晩酌酒と言えば福光屋の「福正宗」だが、料亭や居酒屋の定番酒と言えば 「黒帯」。茶屋街の料亭や割烹料理屋、居酒屋等では黒帯を扱うお店が多い。
黒帯は以下のラインナップとなっているが、居酒屋等での扱いが多いのは「黒帯 悠々」だ。
・五年熟成 純米「燦々 」 5,500円(720ml)
・古々酒 純米吟醸「飄々」 2,750円(720ml)
・山廃純米「堂々」 1,950円(720ml)
・特別純米「悠々」 1,250円(720ml) ※全て税抜価格
価格帯からいっても昭和51年に発売された悠々が普及帯のお酒であるとともに、純米酒に精米歩合50%の純米大吟醸酒を25%混和した特別純米酒となっている。その特純をさらに蔵で熟成させることで、独特のキレと酸味が増した日本酒に仕上がっている。
そして黒帯ブランド全体に通じたコンセプトだが、常温や冷酒は無論のこと、燗を付けても旨い酒として醸造されている。
それもぬる燗から人肌燗、熱燗と様々な呑み方をしても見事な味わいの形にする、蔵元の言葉を使えば「まさに燗の王者と言わしめる」お酒となっている。
常温・冷酒・燗酒いずれの状態でも旨い辛口のお酒、それが刺身や寿司料理が多い日本海の街金沢の料理に合う酒として、多くの料亭や居酒屋で愛用される理由だと思う。
そんな金沢で良く見掛ける黒帯悠々だが、冷酒で飲むと口に入れた途端にほのかな甘みと熟成された酸味が絡み合ってくる。そしてフルーティーな風味が広がったかと思うと辛口な後味で締まるキレの良い酒。
ぬる燗にすると酸味とキレがが際立つとともに、後から広がる上品な芳醇さが両立する柔らかいお酒になる。
辛口なお酒は燗につけると辛口な面が強調されて旨みが少なくなるお酒もあるが、黒帯悠々は燗酒にしてもキレと芳醇さのバランスが良い酒になっている。
個人的には熟成酒は独特の酸味が強くなるため苦手なのだが、黒帯悠々も同じような特徴がある。そのためより端麗で芳醇なお酒を好んで飲んでいたが、黒帯悠々は酸味の強さがそこまでではなく、クセがない醇酒に仕上がっている。
同じような特別純米酒として福正宗の「銀ラベル」があり、こちらも純米酒に純米吟醸酒が混和されている。喉ごしが良いキレと純米酒の旨みのバランスが良く個人的には好きなお酒だが、銀ラベルよりも黒帯悠々の方がキレや酸味が感じられる力強いお酒に感じる。
軽く一杯やりたい時には銀ラベル、肴に合わせて日本酒を味わいたい時は黒帯悠々と言った飲み分けが出来るのが、福光屋の酒蔵としての強みだと思う。
最近は若い時に好んで呑んでいた香りが華やかでかつ爽やかな薫酒から、歳を取るにつれ、完熟で控えめな醇酒を最後の一杯に持ってくることが多くなってきた。
少しクセのある旨い日本酒を飲むならぜひ金沢で呑まれている黒帯も、酒通の皆さんの品書きの一つに加えてもらいたいと思う。
黒帯悠々ラベル
悠々の解説。
福光屋のキャップ
熟成しているためか少し黄みがかった色合い。
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