石川の霊峰白山の麓に広がる鶴来町。その鶴来で白山の伏流水を用いて日本酒造りを行っているのが、前回、特別純米のレビューを書いた萬歳楽で有名な小堀酒造。今回小堀酒造さんの本店に行く機会があり、折角なのでひやおろしでも買おうと考えて蔵元に伺った。
小堀酒造の本店では蔵元の直営ショップとして、小売店では出回らないお酒も含めた各種日本酒や梅酒が購入できるとともに、試飲も行うことが出来る。
そして試飲の他に本店のみの限定販売として、萬歳楽の量り売りも行っている。
この量り売りは店内に設置してある冷蔵庫に保管されているタンクから、直接瓶(500ml)に生酒を詰めてもらえるもの。毎月「純米 生詰酒」「吟醸 生原酒」「純米 大吟醸 生詰酒」のうちいずれか一つを量り売りしており、一月単位でローテーションして販売している。
訪問日は「純米 大吟醸 生詰酒」が量り売りされており、値段を尋ねると税抜きで1,429円とのこと。純米や吟醸だと1000円前後とのことで、500mlでこの値段はちょっと高いなと思ったが、以前キリンのビール工場で出来たての生ビールを飲んだ時の旨さを思い出し、折角なので大吟醸を味わってみることにした。
本店のみの限定販売なので、瓶もラベルも通常品とは異なる仕様。蔵元からの運送や店舗での保管を前提にしていないためか、透明な瓶に生酒が注がれる。またラベルもオリジナルの物で購入日の日付がラべリングされる。
折角の高級生大吟醸、温めない様に車内の冷房を強にして帰宅した。
夜になり早速開封してみると、大吟醸の甘くフルーティーな香りが漏れ出してくる。
口にしてみると、まるで蜜の様な甘さと芳醇に香るフルーティーな吟醸香、そして生酒のまろやかさが口の中に広がる。過去にも様々な蔵元の純米大吟醸を呑んだが、いずれも華やかさと芳醇さの中にキリッとした爽快感もあった。
しかし、この生詰酒は華やかさと言うよりも、妖艶過ぎる程の芳醇さと吟醸香を湛えている。萬歳楽は芳醇過ぎず、あっさりとした華やかさの対極にあるお酒のイメージだったが、今回は良い意味で期待を裏切る甘美で妖艶なお酒だった。食中酒と言うよりは食前か〆のデザートや甘味物と合わせたくなるお酒だ。
店内にいた時は量り売りの生詰酒に心が躍ったものの、やはり値段を見て高い買い物したなあ…と後悔の念も混ざっていた。でもいざ飲んでみると、この味を、この感覚を知って良かったと思える純米大吟醸だった。
とは言え、やはり高いので今度行く時は一番安い純米酒の時期を狙ってみようと思う。
小堀酒造本店限定量り売り酒
ボトルキャップはプリントが無い質素なもの
透明なボトルと白のラベルが盃に映える
小堀酒造本店
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