peach's blog

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オーストリア認定の日本人マイスターが作り出す格調高いザッハトルテ 溜池山王駅「ツッカベッカライ カヌヤマ」

チョコレートケーキの王様「ザッハトルテ
パティスリーやショコラトリーに足を運ぶケーキ好きなら耳にしたこともあるだろう、オーストラリアが誇る宮廷菓子の一つだ。
小麦粉、バター、砂糖、卵、チョコレートなどで作った生地を焼いてチョコレート味のバターケーキを作り、アンズのジャムを塗った後に、表面全体を溶かしチョコレート入りのフォンダン(糖衣)でコーティングする。箸休めとして砂糖を入れずに泡立てた生クリームを添えて食べることもあるウイーンが誇るケーキだ。
1832年ごろにオーストリア宰相のメッテルニヒの料理見習い人であったフランツ・ザッハに従来の宮廷菓子に飽きた貴族階級のために新しいお菓子を創作するよう命じ、ザッハが考案したものだ。ザッハが作った新しい菓子は高い評判を得たという。
その後、ザッハの息子が経営する「ザッハホテル」で独占的に提供されていたが、ホテルザッハの経営難に伴い王室御用達菓子店「デメル」が資金援助と引き換えに販売権を取得しデメルで取り扱うようになった。その後、ホテルザッハとデメルとの間で権利問題が発生し、俗に言う「甘い7年戦争」と呼ばれる裁判が行われた。
北陸で言うと、ブラックラーメンの「大喜」や金沢カレーの本家争いみたいな感じだ。
結果的にはオリジナルはザッハホテルの物とし、デメルザッハトルテの販売を認められた。そして、ホテルザッハーはアンズジャムをバーターケーキの内部にも挟む製法に、デメルはバターケーキの表面にアンズジャムを塗る製法となった。

日本でもザッハトルテや似たような形のチョコレートケーキがよく売られているが、本物のザッハトルテと他のチョコケーキの違いは形とアンズのジャム。
ザッハトルテは丸い形のケーキで、かつバターケーキにアンズジャムが塗られている。
その上にチョコを掛けて成型するので、この製法で作っていないケーキは厳密にはザッハトルテとは言えない。製法を守ってこそ伝統のザッハトルテだ。
そんなウイーンを代表する高級ケーキであるザッハトルテを、本場の製法で提供しているお店が東京の溜池山王駅近くにある「ツッカベッカライ カヌヤマ」。
パティシエである栢沼氏は、中世から近代にかけてオーストリアで栄華を極めた貴族中の貴族であるハプスブルグ家を中心に育まれた格調高いオーストリアの食文化を現地で吸収し、オーストリアが公認したマイスターである。

溜池山王駅 9番出口 から徒歩2分、外堀通りの一本裏手にお店はある。初めてだと分かり辛い場所にあるので、セブンイレブンとお店に掲げられている赤白赤のオーストリアの国旗を目印にするといいだろう。
外観や店内はまさに欧州王室御用達のケーキ屋さん。帝国ホテルの中にあるパティスリーと言っても過言はない。
扱っているお菓子はザッハトルテ以外にも様々なケーキや焼き菓子、「テーベッカライ」と呼ばれるクッキー等がある。
訪問時には予約していたケーキやテーベッカライを受け取りに上流マダムや秘書と思しき女性、高価なスーツを着こなす紳士達が次々と来店していた。社交界では贈答用にテーベッカライを用意するのが主流のようだ。
お目当てのザッハトルテもすぐに売り切れる人気商品で、昼前に訪問したがすでに残り少なくなっていた。一個800円(税抜き)で200円追加するとオプションで生クリームを掛けることが出来るが、お財布事情が良くなかったのでザッハトルテだけを買ってお店を出る。その時は友人と一緒だったので、近くのスタバでコーヒーを注文してケーキを食べることにした。
シンプルな形をしているが、切り分けて断面を見ると高級感溢れるチョコケーキが。
こちらのザッハトルテはチョコレートのスポンジの上にアンズジャムが塗らてている「デメル」タイプ。上品なチョコの甘さとアンズの甘酸っぱさが絶妙なハーモニー。800円は高いが本場の風味が味わえるちょっと大人なスイーツ体験が出来た。生チョコレートなので当日中に食べないと溶けたり風味が損なわれてしまうので中々お土産にはし辛いが、チョコレートケーキ好きなら一度はカヌヤマのザッハトルテを食べて見て欲しいと思う。

ところでザッハトルテはウイーンを代表するチョコレートケーキであるが、似たお菓子に「インペリアルトルテ」がある。見た目は同じようなチョコレートケーキだが、ザッハトルテが円形でバターケーキの上にぬられたアンズジャムの上にチョコを掛けるのに対して、インペリアルトルテはカカオをココアパウダーとココアバターに分離し、粉ミルクを混ぜて作ったミルクチョコレートの下にチョコとアーモンドが多層構造にして焼き上げた正方形のお菓子。1873年のウイーン万博時にオープンした「ホテルインペリアル」で考案されたこちらも上流階級向けのチョコレートケーキだ。
こちらは製法が門外不出の様で日本では中々お目に係れないようだ。
直輸入品の通販でないと購入が難しい様だが、こちらもウイーンを代表する高級ケーキなのでこちらも何とかゲットしてみたいと思います。

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漆黒のチョコレートが高級感を醸し出す

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カヌヤマのザッハトルテ断面。スポンジの上部にうっすらとアンズジャムの層が見える。デメル方式のトルテ。

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カヌヤマのザッハトルテについて。

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