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ひやおろしとは一味違う「秋あがり」の銘酒 松浦酒造「獅子の里 純米吟醸絆 秋あがり」

日本酒を嗜まない人でも9月になると「ひやおろし」が解禁されたニュースを耳にすることがあると思う。「ひやおろし」は春にできたお酒を夏の間寝かして、秋ごろに出荷するお酒。一方で最近では「秋あがり」というお酒も増えてきた。
この「秋あがり」はひやおろし同様に、春に出来たお酒を夏の間に寝かして秋に出荷されるお酒。こう聞くと、どちらも同じものに思えるが違いがある。

そもそも日本酒は上槽(生酒を絞り出す工程)後に、生酒を火入れ(加熱処理)をして殺菌や酒質を安定させる。その後タンクで保管して、出荷時に瓶詰する際に火入れを行い店頭に並ぶ。つまり「生酒が出来た段階」と「生酒を出荷する段階」の2回に分けて火入れを行うのが通常の日本酒。
一方で火入れをしない生の原酒で飲むと非常にフレッシュ感があり旨いが、生酒の中に残っている酵素等の働きで味や風味が変化する。その変化を防ぐために火入れをするのだが、冷蔵で保管することを前提に火入れを1回にして出荷するお酒もある。
この際、「生酒が出来た段階」と「生酒を出荷する段階」のどちらかで火入れをしたかによって、以下のように日本酒の種類が異なる。
 ①「生酒が出来た段階」のみ火入れ  → 生詰酒
 ②「生酒を出荷する段階」のみ火入れ → 生貯蔵酒
よく酒屋やスーパーで売っている生酒で上記の表記を見掛けることがあると思うが、同じものではなく火入れのタイミングが異なる製法で醸造された清酒だ。
生詰酒は原酒が出来た段階で火入れするのでフレッシュ感は少し落ちるが、酒質が安定した生酒の風味を味わうことが出来る。別名「後生」とも言う。
一方の生貯蔵酒は出荷直前まで生酒で保存しているためフレッシュ感が強く、搾りたての風味に近い味わいが出る。よく「生貯」とも言う。

さて話が長くなったが、「ひやおろし」も「秋あがり」も春に絞った生酒を夏の間寝かしているのは同じだが、火入れを行うタイミングが異なる。
 ひやおろし →  「生酒が出来た段階」のみ火入れ  → 生詰酒
 
秋あがり  →  「生酒を出荷する段階」のみ火入れ → 生貯蔵酒
このように同じ秋に出荷するお酒だが、火入れのタイミングと言う製造工程が異なるので実際には風味やフレッシュ感が違うお酒になるということ。

さて、実家に帰省する用事があったので今が旬の「秋あがり」の日本酒を父親にプレゼントしようと思い酒屋に行ったところ、獅子の里の「純米吟醸 絆 秋あがり」が並んでいた。夏に飲んだ獅子の里の「夏純米 オリセー」が旨かったので、今回も獅子の里の秋あがりを購入。720mlで1900円程。父親に渡すとおもむろに酒宴が始まる。男同士だと何も言わなくても酒を呑む雰囲気になる。そんな父子関係もいいもんだと思っていたが、どうやら普段我慢している酒を息子が帰省すると飲めるので嬉しいらしい(苦笑)
生貯蔵なので冷酒で呑んだが、精米歩合60%の純米吟醸だけに香しい吟醸香とコクがあるお酒。一方で吟醸香が強すぎず生貯特有のフレッシュ感も程良く感じられ、程良い酸味とキレのバランスが良いお酒。生貯だと酸味や生感が強いお酒が多いが、このお酒は米の旨みと吟醸香、途中から広がる酸味、そして最後に感じるまろやかな辛口感が綺麗にまとまっているお酒だ。
父親も満足出来るお酒だったのか、最後まで一人で飲みきっていた。

最近はひやおろしを珍重する傾向が強いが、秋あがりもよりフレッシュ感があって美味しいお酒。秋の涼しいこの時期には、秋あがりの酸味と辛さで一気に体を温めるのも一興だと思う。

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